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神奈川アートアニュアル’98 – 明日への作家たち: 作家コメントより

展覧会カタログ『神奈川アートアニュアル'98 – 明日への作家たち』、1998年1月、神奈川県民ホールギャラリー

浅見貴子

小さな子供のころ、部屋の空気の粒の動きが見えるような気がしていました。理科の授業で “ブラウン運動” (微粒子に液体または気体の分子が衝突して起こる不規則な運動)を知ったときには、目から鱗が落ちる思いでした。このことは、自然の中にいるとき、水に墨が溶けるのを見ているときにも感じられ、ささやかな感動を呼び覚ますのです。

草木が育つ、川が流れる、山がじっとしている、季節がめぐっていく、いのちが誕生する……。自然のちから。この豊かさをずっと感じていられたらいいのですが。

絵をつくるということは、体感したことの再現を図りながら、その先のあたらしい「質」を生み出すことだと考えています。

作品は、雲肌麻紙に主に墨、胡粉、銀泥を膠や水と共に使い、線の積み重ねによって成り立っています。私自身が未知の「質」が出現し、画面が自立することを願って制作しています。

作品の展示が、空間の活性化になり、あらたなブラウン運動が、展開されることを期待しています。

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